スティーブン・スピルバーグ提供。8つのエピソードで綴られる幻想的な『夢』の世界。黒澤明監督28作目、監督自らが見た夢を題材にしたオムニバス・ファンタジー。第1話『日照り雨』、第2話『桃畑』、第3話『雪あらし』、第4話『トンネル』、第5話『鴉』、第6話『赤富士』、第7話『鬼哭』、第8話『水車のある村』の8話を収録…(DMM.comより)


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監督:黒澤明
脚本:黒澤明
出演者:寺尾聰(寺尾聡),倍賞美津子,中野聡彦,頭師佳孝,伊崎充則,笠智衆 根岸季衣,原田美枝子,井川比佐志,マーティン・スコセッシ,いかりや長介



第1話/日照り雨
立派な門構えの家の前。陽が差しているのに雨が降っている。こんな日には”狐の嫁入り”があるという。日照り雨を不思議そうに眺めていた”私”に、母が「狐の嫁入りを見ると怖いことになりますよ」と釘を差す。止められて余計に見たくなった”私”は神社の森に入っていき、金縛りにあってしまう。動けない”私”の目の前で繰り広げられる、煌びやかでどこかおかしい狐の嫁入り。十分に楽しんで家に帰った”私”に母は自殺用の短刀を渡し、狐たちに死ぬ気で謝ることを強いる……。狐たちの美しい装束と対比して描かれる自然界の厳しい掟。黒澤の自然への畏怖が感じ取れる一作。
 
第2話/桃畑
姉と女友達が雛祭りのままごとをしていると、不思議な少女が現れる。”私”にはその少女が見えるが、姉たちには見えず馬鹿にされる。少女に惹かれて裏の畑に行ってみると、そこには人間の姿をした雛人形が勢揃いしており、”私”に話かけてきた。これを恐れた人々は「雛人形は桃の木の化身だ」と言い桃の木を全て切り倒してしまう。それを見た”私”は泣き出してしまう。そんな”私”の姿に心を打たれた雛たちは少年に豪華絢爛な花盛りを見せてくれるのだが……。桃の木を自然全体になぞらえて描く、黒澤流の自然破壊と救済の物語。
 
第3話/雪あらし
“私”を含めた4人の登山隊は猛吹雪に遭遇してしまう。お互いをザイルで結び、睡魔と闘っている”私”に、どこからともなく現れた長髪の美しい女が甘い声で語りかけてくる。甘美な囁きに眠りかけた”私”だったが、自分を押さえつけている強い力に気付き見てみると、さきほどまで美しい姿をしていた女が豹変し、白髪の醜い老女になっていた!老女は勝ち誇ったように高笑いし、ブリザードの中に舞い上がる!二面性を持った雪女が象徴する陰と陽。やさしさと厳しさ。黒澤の人生経験がここに結集する。
 
第4話/トンネル
戦時中将校だった”私”は罪悪感と共に戦地から生還した。暮れなずむ中、人気のないトンネルに差し掛かると、夕闇の中から猛犬が唸り声をあげながら向かってきた。驚いた”私”はトンネルの中に飛び込む。不思議なトンネルを抜けた”私”が歩き出そうとすると、重装備の兵隊が闇の中から出てきた。よく見ると彼は戦時中部下の一人であった野口一等兵で、出てくるなり「自分は戦死したのですか?」と問い掛けてくる。戦死した部下の突然の出現に面食らう”私”だったが、せめてもの罪滅ぼしに真実を本人に告げる。野口は実際は自分の腕の中で息を引き取った事実をかみ締めながら……。戦争の時代を生き、罪悪感を持ちつづけた黒澤の贖罪の物語。
 
第5話/鴉
美術館でゴッホの「アルルのはね橋」を見ていた”私”は、いつの間にか絵の中に入り込んでしまう。その瞬間、絵の中の静止した世界は活動を始める。”私”はゴッホに会うため洗濯している女性たちに話を聞き、大平原でデッサンしている男=ゴッホをついに探し出す。尊敬するゴッホに出会い緊張する”私”に対し、最初は無関心であったゴッホだが「何故、描かないんだね?」と声をかけてくる……。CGとゴッホの融合。やがて自殺に至るゴッホの苦悩を最新の技術を用いて、ゴッホに心酔していた黒澤が切り取ってみせた傑作!
 
第6話/赤富士
真っ赤に染まった富士山。逃げ惑う人々。そこに中にポツンとたたずむ”私”。何が起こったかわらかない”私”は群集の中の一人をつかまえ話を聞く。すると彼の口から「六基の原子力発電所が爆発した」という驚愕の事実が明かされる。群集を追って海岸の方に逃げた”私”だったが、そこでさらに恐ろしい場面を目にする。切り立った断崖から人々が次々に身投げしていたのだ!人々を必死止めようとする”私”に、カラフルな色をした放射能が迫る—。黒澤が心の根底で持ちつづけた恐怖を叩きつけた一作。日本の美の象徴である富士山の赤、放射能の黄、紫などの色で表現され、恐怖を引き立てる。
 
第7話/鬼哭
“私”の前に鬼が現れる。鬼は”私”を不思議なものを見せてくれるという。そこで”私”が目にしたのは、巨大化し人間より大きくなったタンポポ、地の池、その周りで飢餓に苦しむ鬼たち、という地獄絵図であった—。しかも実はその鬼は元人間であり、悪事を重ねた人間のなれの果てだと言う。放射能によって突然変異を起こした植物、食糧危機、そしてそこで苦しむ人間たちをとおして、強欲のために世界を破壊し続ける人間に警鐘を鳴らす。『赤富士』と並んで黒澤の人間の愚かさに対する恐怖が表出した一作。
 
第8話/水車のある村
どこまでも続く大自然。鬱蒼と茂った木々。清らかな水をたたえた川。その中に”私”がいる。”私”は水車の修理をしている老人と出会い、その話に耳を傾ける。その老人の口から出てきたのは、自然と尊び、共存する人間たちの姿だった—。『赤富士』『鬼哭』で人間の所業とその結果を壮絶なまでの映像で見せた黒澤が、その締めくくりで見せた人間への希望のメッセージ。奇をてらうことなく、訥々と語る老人と黒澤の姿が重なって見える最後の『夢』の物語。
 
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